ロンドンにて。そして、これからのこと。
その募集要項をネットで見つけたの今年の5月くらいだったように思う。
それは、写真に対する姿勢についてさんざん悩んだあげく「遠慮せず本気でやる」と決めた直後のことでした。
EWAA 2013は、ロンドンを拠点とするアート団体「EWAA」が主催する写真、絵画、彫刻、コンテンポラリー、ムービーなど6つの部門からなるアートコンペ。
海外のコンペに応募する、そのことだけで、すこしワクワクしている自分がいたのは確かです。
あのときの小さな決断がなければ、ロンドンへわざわざ赴くこともベースボールバットで殴られたような、強烈に刺激的な体験を得ることもなかった。人生は、本当になにが起こるかわからないものです。
もしグランプリが獲れたら、などという浅はかな妄想を幾度となく繰り返してはいたものの結果として受賞に至ることはありませんでした。
そしてなにより衝撃を受けたのは会場に展示されていた、今回のファイナリストたちの作品。思わぬ衝撃を受けました。みんなすごかった。本気なんだろうな、命かけてるんだろうな、そう思わずにいられない作品が数多く並んでいたのです。
それは、サラリーマンやりながら趣味程度に写真を撮って喜んでいる自分がすこし恥ずかしく思えるほどの衝撃でした。
これでは賞など獲れなくて当たり前。作品に込められた「魂の物量」が、圧倒的に違っていたのです。時間や手間やお金を惜しまず、ただひたすらに作品のクオリティを高めることだけに注力するストイックな魂。
今後自分の作品を高めていくために絶対不可欠なファクターをロンドンの地で目の当たりにしたのでした。
いつか「遠慮せず本気でやる」と決めた、そんな決意などはまだまだ甘ったるいものだと思い知らされたのです。
ただ今回唯一のなぐさみとしては表彰式後の懇親会で主催者の方から次のような話を聞かせてもらえたことです。
「あなたの作品も審査員の間で人気は高く、受賞できた作品との差は本当に僅かだった。写真を撮り続けてほしい。そして来年もぜひ出品してほしい」
リップサービスのエッセンスを差し引いたとして、きっとこのコメントは信じていいのだろう。いや、信じるべきだ。
5月の小さな決断がもたらした悲喜こもごもの冒険は、ひとまず終幕をむかえました。同時に、次なる冒険に向けて、密かに想いをめぐらせている自分もいるのです。
そういえば会場にいた、同じくファイナリストながら受賞には至らなかったイギリス在住のブラジル人アーティストとの会話を思い出した。
「来年は、私たちがWinnerになりましょう」
よし、次だ、次。