街歩きで待ち遠しい、あの感覚について。
街の写真をメインで撮っている僕にとって「写真を撮る」とはすなわち「外を出歩く」ことを意味する。
そして慣れ親しんだ道では、新しい発見や驚きが見出しづらいため、できるだけ初めての、今までに歩いたことのない道を選ぶようにしている。
例えば少し電車に乗り、適当な駅で降り、そこから自宅やオフィスのある場所まで、なんとなく方角だけを頼りに歩く。
できるだけ大通りは避け、小さな道を行く。これだけで、初めて踏み入れる、新しい風景に出会うことができるのだ。
少しでも気になるモノや風景があったなら、それに向けて容赦なくシャッターを切る。アングルや、それとの距離を少しづつ変えたバリエーションをも意識しながら、カメラに収めていく(これができるのが、デジタルカメラの良いところだ)。
気分によっては好きな音楽を聞きながら、何か考え事をしたいときは無音で、世界と自分との距離感を大切にしながら歩いて行く。
そうこうしているうちに、僕はいつしか、慣れ親しんだ場所へと近づいていく。
「はじめての道」を歩いていたはずなのに、唐突に、何の前触れもなく「慣れ親しんだ道」へ出る。
あ、ここか。
この瞬間、僕は立ち止まらずにいられない。
接点のなかった脳細胞が、急激に、それも強固に結合したような感覚。
心地よい夢から、瞬間的に現実へと呼び戻されたような感覚。
素晴らしいアイデアが、思ってもみないタイミングで突然降ってきたかのような感覚。
これはもはや、快感であるとすら言える。
歩いてきた道を振り返る。これは今まで知らなかった初めての道だ。
前方を見る。これは今まで慣れ親しんだ、いつもの道だ。
世界は、僕の知らないところで、密接につながっている。
夢も現実も、隣り合わせに存在している。
この感覚を探すことが、街歩きのもうひとつの楽しみになっている。