シャッターチャンスも一期一会。

昨年の暮だったと思うが、仕事で渋谷を訪れた時に、バスロータリーに立つ街路樹に向けてシャッターを切った。

昼下がり、冬の空にはひとつの雲もなく、街路樹の葉に白い太陽が重なっていて、その風景を美しいと思ったからだ。その時は特にそれ以上思うことはなく、その場を離れ約束の場所へと向かった。

2週間後、ふたたび渋谷を訪れる機会があり、何気なくバスロータリーの街路樹を見上げた時にハッとした。街路樹を覆っていた葉はほぼすべて落ち、幹と枝だけの状態になっていたのだ。

「あの時、撮っておいて良かったな…」そう痛感した。

人との出会いは一期一会、素敵な本との出会いも一期一会。そして僕にとっては、心惹かれる風景、シャッターチャンスも一期一会なんだと思った。

撮りたいと思った時にシャッターを切らなければ、同じ風景に出会うことは二度とないかもしれない。心惹かれる風景との出会いはいつも突然だから、常にカメラと心の準備をしておく必要があるのだ。

年が明けまた渋谷を訪れた時も、同じ街路樹を見上げてみた。曇天の空を背に、少し寂しげな街路樹が佇んでいた。