センスとは、知識量のことである。
自分の写真や広告クリエイティブの仕事の成果を人に見てもらったときに「センスがあるんですね」と言われることが稀にある。
「そうですね」とも「そんなことないです」とも答えがたい「センス」という褒め言葉。この厄介なシロモノに対してどう反応するのが正解なのか思い悩むのと同時に、センスとは一体なんなのだろう、とも思う。
センスという言葉を辞書で紐解くと「物事の微妙な感じや機微を感じとる能力・判断力。感覚。」とある。何となく違和感を覚えるのは、一般的にもそう思われているかもしれないが、センスとは先天的に備わっている能力だという認識のせいかもしれない。
僕は、センスとは身につけるもの、知識や経験の量で磨かれるもの、だと思う。
ファッションセンスが良いと評される人は、普段からファッション誌に目を通し、ショップに足繁く通い、道行く人の服装に常に目を光らせている人のことだろう。
デザインセンスが良いと評される人は、普段からデザインについて勉強を重ね、アートギャラリーなどに足繁く通い、最先端のものに常に触れている人のことだろう。
そういった、影の永続的な努力(本人は努力とすら思っていないと思うが)は他人からは見えないため、その人のセンスは、あたかも先天的な才能によるものだと勘違いしてしまうのではないか。
であれば「あの人とはセンスが違う」と妬む人にも充分挽回のチャンスはあるし、「私にはセンスがない」と嘆く人でも大きな希望を抱くことができると思う。
その人が何を考えどう行動してきたか、その集大成が「センス」として他人の目に映る。何かを信じて毎日続けること、好きなことをとことん突き詰めること、それこそが「センス」を磨く唯一の方法なのだろう。