「知ってるかもしれない人」との再会。

以前電車のなかでふと、ある男性と目が合った。

その瞬間「あ、知ってる人だ」と思ったのだが、どこの誰だかはわからない。

それも、考えても絶対に思い出せないと確信できるレベルでわからない。

 

きっと、過去に仕事で一度だけ会い、名刺交換をした人なのだろうと思った。

思い立って名刺の整理をしているときに「これ誰だっけ」「どんな人だっけ」となる程度の

まったくもって交流のなかった人々。そのなかのひとりなのだろう。

 

そしてやってきたのは、何とも言えない気まずさ。

まさか電車のなかで、以前会ったことありましたよね、と聞くわけにもいかず。

加えて、知りません、と言われてしまったときのさらなる気まずさは、もはや恐怖でしかない。

 

いや待て、相手の表情を察するに、相手も同じことを考えているかもしれないぞ。

僕と同じように「この人誰だっけ」と思っているのかもしれない。

 

ここは話しかけるべき?それとも赤の他人として静観するべき?

どうすればいいんだ。どうすれば…

 

結局、僕らの間に言葉が交わされることなく、お互いがそれぞれ目的の駅で降りた。

 

もし彼に話しかけていたら、どうなっていたのだろう。

大恥をかいたかもしれない。新しい交流やビジネスが発生していたかもしれない。

すべては闇の中。

 

こういう時って、どうすればいいんだろうなあ、と今でも思う。

こういう時だけ、無邪気に話しかけられるメンタルの強さがほしいと思う。